キューバとダイキリとヘミングウェイ

今日は1日キューバのハバナにいる。

携帯が鳴った。名誉顧問の秘書からだ。社長は退任したが、現役の社長より権力を持っているのは実は彼だ。インドについてとの事だがインドは行った事がないのでとお断りしたのだが、もう一度秘書より電話があり、やっぱり名誉顧問が来て欲しいそうです。今日は何時なら役員室にこれますか?その若い彼女の白い細っそりとした脚を思い浮かべながら、私はすぐに行くのでと伝え、やれやれと思いながらネクタイと上着を着て最上階へエレベーターで向かった。名誉特別顧問はとてつもなく頭が良くて、私が知る限りこの人と議論して勝った人を見た事がない。
最上階へ行くと、社長室よりも広い特別顧問室へ秘書に通された。
「お前スペイン語ができるよな。キューバへ行った事があるか?キューバへ出張する予定なんだ」
通訳つけずに一人で出張するのに生きて行けるぐらいのスペイン語である事、ビジネスはないのでキューバは行った事がない旨説明しその他軽い雑談をしてその部屋を離れた。
出世から離れて一匹狼の私に、何故だか気に入られているのか?後日同行せよとの旨のメールがきた。私が行く事で担当役員や同行する役目の秘書室長は混乱している。出世から離れた一匹狼でも部長職でもあるので、規定違反にはならないし本社でまともにスペイン語できる奴はいない。でも一番迷惑なのは私だ。そもそも自分の仕事が溜まる事になるし。給料でも上げてくれるなら喜んで行くのだが。。。。

と言うわけでヘミングウェイの好きなダイキリをbar Florinsで飲んだ。横で座っている特別顧問が大嫌いなタバコを気にせずに吸っていた。壁にはヘミングウェイの真っ白なスーツの写真が飾っていた。California Straits(カリフォルニア海峡)と言う映画を思い出した。男は港でヨットをチャーターしてアメリカから 密航しキューバへ残して来た昔の恋人に会いに行く。ジャングルを抜けいよいよ彼女の家の前まで来た時、それまでの汚れたジーンズから純白なスーツに着替える。その純白なスーツ。印象的だ。
彼女に近くの公園で結婚をして欲しいと尋ねる。彼女が返事をする前に男の子が現われ、お母さんと言って彼女を抱きしめる。それで全てを彼は理解しその映画は終わる。
ヘミングウェイがよく行ったレストランでモヒートを飲みながら、老人と海のようなボートを眺めていると、Spring is here を楽団ギターの伴奏で歌手が歌っていた。